【大相撲】力士の「髷(まげ)」について解説!ちょん髷?大銀杏?

力士の髷(まげ)にも種類があり、特に大銀杏を結わえるには条件があります。当記事では、それらを踏まえつつ、髷に使われている油や歴史などについて解説しているので、気になった方はどうぞ寄ってってください!

力士の髷はちょん髷と大銀杏の2種類

力士の髷(まげ)は、ただ髪を結わえたちょん髷と十両以上の関取になって(ただし例外もある)結わえる大銀杏の2つに分けられます。

大銀杏は、字のごとく銀杏(いちょう)のようなかたちをしていることからその名がつけられており、TVで見慣れているからは、力士の髷といえば多くは大銀杏を想像するかもしれません。しかし、あれは選ばれた力士のみにしかできない特権で、大半の力士はちょん髷なのです。

また、大銀杏を結うには専門的な技術が必要で、床山と呼ばれる力士の大銀杏を結うための専門職が存在します。

大銀杏は十両以上から

大銀杏が関取以上の条件付きであるのに対して、ちょん髷は髪さえ伸びていれば番付関係なくいつでも結わえることができます。ただ、前提として髷を結わえるほど髪が必要となるため、髪が伸びるまではオールバックにした、いわゆるざんばら髪にします。

例外的に十両以下の力士でも、初っ切り、弓取り式、相撲甚句といった何か儀礼的な場合や、あるいは床山の練習などを任された、三段目以上の力士が大銀杏を結わえることもあります。

また、幕下以下に転落した関取は、再び十両に上がらなければ取組で大銀杏を結わえることはできませんが、断髪式ではたとえその時点で十両以下であっても大銀杏を結わえることが許されます。

ちなみに力士が髷を結わえるくらい髪が伸びてくるのは、大体三段目あたりから。それ以下の番付の力士は、ほぼざんばら髪です。あと、異例のスピードで入幕をした遠藤や逸ノ城は、幕内でざんばら髪で取組をしたことで一時話題となりました。

甘い香り、髷につける「油」の正体は?

力士から漂ういい香り、筆者も実際に何度か力士にお会いしたことがありますが、力士からはなんともいえない独特な甘い香りが漂っています。

この香りの正体は、実は力士が髷を整えるためにつける「油」。

「すき油」と呼ばれる油が使われており、原料は九州産の櫨(はぜ)の実とのこと。それ以外にも、もくろう(木蝋)、なたね油、ひまし油、数種類の香料が含まれます。

ちなみにあの独特な甘い香りの正体は「バニラ」。ただ、これもあくまでもメインの匂いのため、バニラそのものというわけではありません。

髷の歴史

日本古代より何千年と続く大相撲は、他の形式や様式同様に、髷もまた様々な変遷を経て現在のかたちとなっています。

古代の相撲神事と呼ばれたときは、当時では一般的だった角髪(すみら)と呼ばれる髪型で相撲をとっており、その後の節会相撲では髷をつくらずに髪をまとめた茶筅(ちゃせん)髪、そして室生時代後期あたりにて職業相撲の力士はさんばら髪をまとめた、丁髷に近い髪型で相撲を取るようになっています。

江戸時代になると、力士の髪型もめまぐるしい変化を遂げており、丁髷、野郎髪、角前髪、櫓落し、男髷、本中髷、栗髷など様々なバリエーションが誕生しています。

肝心の大銀杏が誕生したのは、その後の天明・寛政年間(1781~1801)ごろ。それまでにあった髪型は全てなくなり、そのまま大銀杏と丁髷が大相撲力士のスタンダードの髪型となっています。

このように大銀杏は、古来日本から続く大相撲からしてみれば、まだ比較的新しい文化だといえます。もしかしらか、今後も髪型が少しずつ変化していく可能性も十分に考えられます。

ちなみに明治維新で大相撲が髪型を変える必要がなかったのは、西郷隆盛と板垣退助らが大の相撲ファンだったから。つまり、忖度を受けたのです!彼ら相撲好きがなければ力士の髪型はまた違ったものになっていたかも!

総括

力士の髷は、大きく分けて大銀杏とちょん髷の2つが存在します。基本的に十両以上の力士が大銀杏、それ以外の力士はちょん髷です。

髷は、日本文化そのもの。そこには、古来より続く歴史があるのです!